私を含めこのパラグアイを訪れた日本人が誰しも実感するのが、当国の日本人社会の醸し出す格別な存在感ではないでしょうか。日本人としての共同体、言葉、文化を大切に維持しつつ、一方で当国の幅広い分野での重要な構成員として違和感なく溶け込んでいる姿は、バイカルチャーの体現そのものです
パラグアイ国民は移住者や日系社会に対する信頼と敬意を、日本人社会は自分たちを受け入れるパラグアイに対して感謝と共存の念を、それぞれがごく自然に抱いている状況は、おそらく他の国では見られない姿だと思います。
1936年5月に開始された移住事業は来年で80周年を迎えます。想像もつかない未開の原始林を開拓し、不幸にして志半ばで物故された方々も多数おられる中で、農業分野を中心とする旺盛な生産活動によってこの国の発展に多大な貢献をしたからこそ、日本から遠く離れたここパラグアイで、独特の存在感を示す日系社会が築き上げられたのでしょう。
日本政府は、当初の移住者支援から始まり、それと並行して多年にわたり農業・教育・医療・交通分野など幅広い社会資本整備や技術者・専門家による技術協力を実施してきました。日本の無償資金協力で建設された『パラグアイ・日本・人造りセンター』に象徴される各種協力事業のもつ有形無形の資産的価値やその厚みは想像をはるかに超えるものです。
他方、これまでの長期間に培われた移住者や政府援助による二国間の繋がりに加え、最近急速に進んでいるのが民間企業の進出という新たな経済関係です。この傾向は、近年の当国の目覚ましい経済成長やビジネス環境の変化によるものですが、この背景に移住者や経済協力が地道に築いてきた両国の長い絆があることを忘れることはできません。
最後ですが、2015年から当館ホームページを少し手直し、なかなか日本では分りにくいこのパラグアイという国や日本との絆について、その景色がすこしでも伝えられるように、新たに3つの窓を作りました。
一つ目が【行事カレンダー】で、そこの載っている各種行事の写真などはFacebookでご覧ください。二つ目が【パラグアイ便り】というコラム欄。ここには折に触れいろいろなテーマで読みやすい記事を随時載せていきます。三つ目は【日本ゆかりの写真集】で、当国随所に存在する日本との絆を示す施設や公園を紹介します。
中味については試行しながら徐々に充実させていくつもりですので、よろしくお願いします。
2014年12月
パラグアイ国駐箚特命全権大使
上田 善久 |